この記事の結論
- 賃貸で選べるのは「原状回復できる対策」に限られ、壁や床そのものに手を加える工事は基本的に選択肢に入らない
- 貼る・敷く・置くだけで完結するDIY防音グッズは、隙間からの音漏れや床の振動を軽減する効果が期待できる
- 防音サッシへの交換や二重床・二重天井のような本格工事は、賃貸では管理会社・大家の許可なしにはできない
前の記事では、音には「空気伝播音」と「固体伝播音」の2種類があり、建物の構造によって伝わりやすさが変わることを整理しました。
ここからは、「では具体的に何をすればいいのか」という段階に進む前に、まず知っておきたい大事な前提を確認します。
それは、賃貸で自分ができる対策には、そもそも「できる範囲」と「できない範囲」がある、ということです。
1. 賃貸で「工事」を選べない理由
持ち家であれば、壁に吸音材を仕込んだり、床を二重にしたりといった本格的な防音リフォームも選択肢に入ります。
しかし賃貸の場合、退去時には原則として「原状回復」、つまり借りたときの状態に戻す義務があります。

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の生活で生じる経年劣化・通常損耗については貸主(オーナー)が負担し、入居者の故意・過失による損耗については借主が負担する、という基本的な考え方が示されています。
壁に穴を開けたり、床を剥がして施工したりする対策は、この「借主の過失による損耗」に該当しやすく、退去時に高額な原状回復費用を請求されるリスクがあります。
つまり賃貸で選ぶべき防音対策は、退去時にきれいに剥がせる・撤去できることが大前提になります。
2. DIYで完結する防音対策(工事不要の範囲)
工事不要で取り入れられる防音グッズには、主に次のようなものがあります。

- 防音マット・防振ゴム:床に敷くだけで、足音や物の落下音などの固体伝播音を軽減する
- 隙間テープ:ドアや窓のわずかな隙間を塞ぎ、音漏れを軽減する
- 防音カーテン:既存のカーテンレールにかけるだけで、話し声やオンライン通話の音漏れを軽減する
- 吸音パネル:突っ張り棒や壁掛けフックで固定でき、部屋の中の反響や音のこもりを軽減する(壁越しの音漏れを減らす効果は小さい)
これらに共通しているのは、「貼る・敷く・置く」だけで設置が完結し、退去時に工具を使わずに撤去できるという点です。
両面テープを使う場合も、壁紙を傷めにくい弱粘着タイプ・剥がせるタイプを選べば、原状回復のリスクを抑えられます。
それぞれのグッズの具体的な選び方や比較は、第2章で発生源別に詳しく扱っています。
3. 業者に頼む必要がある本格的な防音工事
一方で、次のような対策は原状回復が難しく、賃貸では基本的に選択肢に入りません。
| 対策の種類 | DIYで対応可能 | 業者・工事が必要 |
|---|---|---|
| 床の防音 | 防音マット・ジョイントマットを敷く | 防音材を仕込んだ二重床への張り替え |
| 窓の防音 | 防音カーテン、隙間テープ | 防音サッシ・内窓への交換、二重窓の後付け |
| 壁の防音 | 突っ張り式の吸音パネル | 壁の中に吸音材を仕込む内装工事 |
防音サッシへの交換や二重床・二重天井の施工は、建物の構造や共用部分に関わることも多く、たとえ費用を全額自己負担すると申し出ても、管理会社や大家の許可が下りないケースが一般的です。
こうした本格的な対策がどうしても必要になった場合の考え方は、第4章で改めて扱っています。
4. 迷ったときの境界線の考え方
「この対策は自分でやっていいのか」と迷ったときは、次の2つの質問で判断すると整理しやすくなります。
- 退去時に、工具を使わず・壁や床を傷めずに撤去できるか
- 管理会社や大家に事前連絡・許可なしで実施できる範囲か
両方に「はい」と答えられるなら、基本的にDIYの範囲内と考えてよいでしょう。
少しでも不安が残る場合は、実施する前に管理会社や大家に一言確認しておくと、後々のトラブルを避けられます。
次の記事では、防音対策を「楽器」「オンライン通話」「ペットの足音」「子どもの足音」「下階からのクレーム対応」という悩みの発生源別に整理し、自分がどのタイプに近いかを確認していきます。
今日のアクション
- 自分がやろうとしている対策が「貼る・敷く・置く」だけで完結するか確認する
- 賃貸借契約書で原状回復に関する条項があるか確認する
- 不安な場合は、実施前に管理会社・大家に一言相談してみる
次に読むべき記事
- 前の記事:➔ 賃貸の騒音トラブル、そもそも何が「うるさい」と感じられるのか
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